「恩寵燦々と―聖霊論的自叙伝」書評

[月刊]キリスト教書評誌 本のひろば 2017年12月号より

使命・希望・勇気に満ちた書


使命・希望・勇気に満ちた書

書評 三谷康人(みたに・やすと=元カネボウ代表取締役)

『恩寵燦々と』を読了後、心の底から「こういう〝すばらしい生き方〟もあるんだなあと、込み上げて来る深いものがありました。十年程前に、手束牧師の著作『教会成長の勘所』を読んだ際も、地方の一牧師がこれだけの内容をよく書き上げたものと感服したものです。その時、手束牧師は事業経営の手腕も高いレベルにある方だと思わされました。たとえば「教会成長のためのパラダイムシフト」として二百名の壁を破るためには「羊飼いとしての牧師像から、牧場主としての牧師像に脱皮することである」という一節があります。それは牧師のイメージを変え、管理スタイルとリーダーシップを変えることを意味します。ビジネスの世界でも同じです。企業盛衰の鍵は、管理者から経営者(=社長)の発想・視点にまで成長出来るかどうかに、求められます。
 ところで、最近の日本のキリスト教界に目を転じますと、高齢化、無牧化、CS生徒の減少等、衰退の一途をたどっています。危機感を強めざるを得ません。
 その様な時、手束牧師は兵庫県高砂市という地方の町で、分裂騒動を起こしながら、信徒数四十名程から出発し、今では四百五十名を超えて、成長を続ける教会に育てておられます。その上、多くの他の教会成長を指導されてもいます。
 一方では、毎年、韓国、台湾に行かれ、その成長のノウハウを吸収し、再構成して日本の伝統風土の中に溶け込ませるために尽力しておられます。そこには手束先生の使命感と同時に、不思議な力を感じます。どこにその秘密があるのでしょうか。細身の体でいつもニコニコしながら話される姿には愛があり、祈りがあり、力があります。どうしてそのような凜々しい先生が育ってこられたのか、いつも不思議に思っていました。その回答が本書の中に発見できます。
 手束牧師は敗戦後、満州大連で母との死別、二才で従兄弟の背中に負われ日本に引き上げ、茨城県の結城にある祖父母の所に帰り、そこで中学まで育てられたのです。その時の事を、懐古して次のように述べておられます。

 相当な確率の高さで、幼い時に死んでいてもおかしくなかった私が、今日まで生きながらなえ、今このようにして幸いな人生を歩んでいる背景には、大いなる神の愛と保護、燦々とした恩寵の注ぎがあったことを証したいのである。

 結城の中学時代の心の寂しさ、父は帰国し後妻をもらって大阪勤務、その後、関西学院の高等部に入学、神に触れられ、受洗。その後も、後妻との不和等による父との確執=親替え(父から神へ)という神からの荒療法、そして真理を求め続けた神学生時代、そして、すばらしい女性と結婚。どれ一つとっても、そこには厳しい試練が待っていました。と共に、主の恩寵がありました。

 本書のクライマックスの一つは、高砂教会へ二十八才の若さで就任された時から始まります。そして「試練は恩寵と一つになってやってくる」との証しの時期が続くのです。ここでは紙面の関係で主要な部分のタイトルのみ挙げてみます。

 就任時の高砂教会①「私はここで骨を埋めます」の覚悟②辞表を振りかざした波乱の幕開け、聖霊降臨のもたらした大転換④「キリスト者の完全」と「いやしの賜物」の拝受という大きな体験、カリスマ刷新をめぐる七年間の戦い①牙をむいた悪魔の宣戦布告(※評者注 カネボウ土地購入反対)③挫折のなかで獲得した〝恢復〟の信仰、④牧師館建設問題で露呈した信仰の根深い対立、見事な神の御計らいを見よ⑥「苦悩の冠」を経て戴いた大きな財産⑦「赦しへの服従」がもたらした大いなる祝福

 本文の中にジョン・ウェスレーの母の愛読書『霊の戦い』にふれた箇所があります。「神から大きな使命を与えられた人には、必ず迫害者、攻撃者は付きものなのであり、それらの人々によって、錬られ鍛えられてこそ、その大命と果たし得る者として人として整えられることになる。」(これは神の摂理であり、避けられない運命なのである)……まさに手束牧師の人生そのものであり、そこに素晴らしい恩寵と燦々とした輝きがあります。本書は手束牧師のアイデンティティ確立の旅物語でもあるといえます。(ロマ書・五章一~五)
 この本から読者はご自分の人生における使命の再確認と生きる希望と勇気を見出されることでしょう。私自身、会社生活は降格三回、直言したため赤字の子会社に左遷という一見挫折と失意のように見える人生でした。しかし、それは勝利に至るために必要な道でした。この本を読みつつ自分の人生と重ね合わせて、主の恩寵の見事さを一層強く、首肯する事ができました。この本と出会ったことを感謝します。






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